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そして、人類が息絶え、地球を汚染する存在がいなくなってからどの程度で安全な環境に戻るか、も計算した。
1300年、というのが導き出された答えだった。
これは、最低限の環境条件である。ノア計画が成功して人間が戻ってきても確実に安全な時期を考えるなら、2000年は見た方が良いということになった。
とはいえ、2000年後に環境が戻った地球に降り立ったとしても、そこには何もない。
住む家はもちろん、生活する上でこれまであたりまえのようにあった文明の利器はほとんど0なのだ。宇宙ステーションで時を超え、地球に降りることができるのは、限られた人々と人数分あるいは世帯分の簡易テント、最低限の食料と太陽エネルギー利用の冷蔵庫、そして、必要となるであろうと思われる科学データを保存したタブレットだけだ。
それ以外は、原始時代に近い状態から始めなければならない。
2000年後の地球環境に適した農耕や狩猟、漁猟等を、帰還後数ヶ月以内には軌道に乗せないと生き続けることはできない。
サバイバルである。降り立った人間達が平穏に暮らしていける保証などない。
もしかしたら争いも起こるかもしれないし、それにより結局滅んでしまうかもしれない。
しかし人類は、存続に賭けた。切り開いていく可能性に賭けた。
テツヤは食品科学分野における新鋭学者として大いに期待されている。2000年後の地球に、最も必要となる人材の一人だろう。
「僕は、まだノア計画に参加するかどうか迷っているんだ」
テツヤが目を伏せる。
「なに言ってるの? あなたの知識や技能を活かせるんだよ、その、新しい地球では」
訴えかけるように言うアヤ。
「でも、アヤはいない……。そんな世界は、僕はイヤだ」
アヤは息を呑んだ。嬉しい。しかし、その気持ちを、受け入れるわけにはいかない。人類の未来のためには……。
「ダメだよ、テツヤ」彼に抱きつき、その胸に顔を埋めるアヤ。「あなたは、新しい地球を築いていくために必要な人。私のことなんて、忘れて。そして、人という種を後世に残すことに力を注いで。私は、そうしてくれるのが嬉しい」
「アヤ……」
悲しそうな目をしながら、テツヤはアヤを抱きしめた。
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