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2×××年―― リオナとリョウ
ジュリアと妹のサーヤは、手を取り合いながら必死に走っていた。
しかし、路地の先は行き止まりとなり、息を呑む。
「お、お姉ちゃん、どうしよう?」
サーヤが泣き叫ぶように言う。
ジュリアはそばに落ちていた鉄パイプを拾い、後方に目をやる。
獣のような目をした男達が4人、追いかけてきた。
「さーて、追いつめた」
一人が言った。大柄でモヒカン頭。おそらくリーダー格なのだろう。
「別にさぁ、命までとるとは言ってないじゃん。いいことしよう、っていうだけだぜ?」
金髪がニヤニヤしながら言う。その隣では、スキンヘッドが逃げ道を塞ぐようにしていた。反対側には顔中タトゥーを入れた男がやはり仁王立ちしている。
ジュリアは順番に鉄パイプを向けながら、睨みつける。
金髪が一歩前に出た。ジュリアがそちらを向いた隙に、モヒカンが彼女の手から鉄パイプを奪い取ってしまう。
「あっ!」と目を見開き叫ぶジュリア。
モヒカンは「ゲヘヘ……」と笑いながら鉄パイプを捨てる。カラン、という音が虚しく響いた。
「どうせ俺たち、地球と一緒に死ぬんだよ。ノア計画なんかには参加できないしね。だったら、それまで目一杯楽しいことしなきゃ損だろ? あんた達もそう思わないかい?」
金髪が言った。
「サーヤは……妹は逃がしてあげて。私はどうなってもいいから」
ジュリアが訴えかける。
「お姉ちゃんっ、だめっ!」
サーヤがジュリアにしがみついた。
「美しいねぇ」モヒカンがギロリと睨みながら言う。「俺ら、そんな美しいのをメチャクチャにするのが好きなんだ」
「誰かっ! 誰か助けてっ!」
ジュリアは夜の闇に響き渡るほどの声をあげた。
「ムダだよ」金髪が相変わらずにやつきながら言う。「もう、今の世界に、正義の味方なんていやしないさ」
他の3人も「へへへ……」と笑い始めた。
「助けてっ!」
サーヤも姉に倣い叫ぶ。
「ムダだ、って言ってんだろ?」
男達が姉妹に迫っていく。その時……。
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