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「そうでもないさ」
どこかから、気軽そうな男の声。
一斉に全員の視線が声の主を探す。
凶暴そうな男達の後方に、2人の男女の姿があった。どちらもスーツを身につけている。
長身で引き締まった体の男性、一見華奢だが姿勢の良さから只者ではない雰囲気を漂わせている女性。
「な、何だよ、あんたらは? 邪魔しないでくれよ」
金髪が言った。
「こんな世界の終わりに、まさか人助け? バカじゃねぇの。殺しちゃうよ?」
モヒカンが睨みながら言う。
「そうもいかないんだよ。俺はヨコハマ・シティ・ポリスのリョウ・シゲモリ。こっちはリオナ・ツキオカ」
男が名乗った。リオナと呼ばれた女性は軽く肩を竦める。美しいセミロングの黒髪が風になびく。
「刑事かよ。まだいたんだ、そんなヤツ。今の世の中、犯罪だらけだぜ? 俺たちより、別の方へ行けよ。その方が身のためだぜ」
金髪が馬鹿にしたような顔で言った。
「そう、犯罪だらけで忙しいんだ、俺たち。だから、とっとと終わらせる。おまえら4人、逮捕する。いや、その前にぶちのめす」
リョウが一歩前に出る。男達4人が身構えながら広がっていく。
「リオナ、一応署に連絡してくれ。新しく4人逮捕するから、って」
「イヤよ」と首を振るリオナ。
「なんでだよ?」
「こういうヤツら嫌いなの。半分は私がぶちのめす」
「しかたないなぁ」肩を竦めるリョウ。「じゃあ、俺はモヒカンとタトゥー顔な。おまえは金髪とスキンヘッドっていうことで」
「ふざけんなっ!」
モヒカンが突っ込んでいった。リョウに向かって大きな拳を繰り出す。
しかしリョウは、その拳を避けながらモヒカンの鼻先に頭突きを喰らわせた。
怯んで後退るモヒカンを尻目に、リョウはタトゥー男の前まで素早く動くと、そのみぞおちに前蹴りをめり込ませた。さらに、前のめりになったタトゥー男の襟首を掴み、払い腰で投げ飛ばす。
路面に叩きつけられ一瞬で気を失うタトゥー男。リョウはすぐに振り返り、体勢を立て直して殴りかかってきたモヒカンの拳をまたしても躱す。そして、逆に渾身の右ストレートを放った。
モヒカンの巨体が吹っ飛び、ドウッと音を立てて路面に落ちた。すでに白目を剥いている。鼻は粉々に砕けて陥没していた。
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