31人が本棚に入れています
本棚に追加
ふと、もう一度窓の外を見た。夢で私を呼びかけていた男によく似た人物が、チラリとこちらを向いて口をいやらしく曲げて笑っている。まるで、何かブツブツと奇妙なことを言っているように見え、その内容はなぜだか私の耳にも届いていた。
「命拾いしたようだな……いや、それとも……
お前は、自分が逃げる方法をよく知っているからな。
またうまく、蘇りでもしたのか?」
その言葉にハッとして我に帰ると、見上げた天井のシミは、先ほどよりもやはり少しズレているように思えた。
「私の意図しないところでまた奇妙なことが起きてしまった。偶然にしてはあまりにリアルすぎて、少しこわいな」
それ以上考えるのはやめて、私はそのままゆっくりと目をつぶった。
しかし、私は気付かなかった。
ジャムの下に、よく見ると赤黒く汚れたシミが染み付いている。それが一体何であるかは私の知るところではなく、おそらく関係ないのだろう。
だが、その奇異な正体が何モノなのかは、私が疑問を持たない限り、真実を知る由もない。
最初のコメントを投稿しよう!