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「……疲れた」
苺のジャムをつけたパンを一口かじりながら、思わず息を漏らした。私の口癖だ。
気が付くと、いつも溜め息ばかりついている。息をする度に身体が怠く重く感じるのだ。毎日、会社と家の往復ばかりで変わりもせずに、ずっとこのまま続くのかと思うと、何をしていても溜め息をせずにはいられなかった。
この、グレーな気持ちが起こり始めたのはいつの頃からだったのだろう。
何をやってもうまくいかず、誰に相手をされることもなく、よく不貞腐れてはすぐに横になって天井のシミを眺めていた。
この天井には、八角形の形をした模様の描かれたタイルがあり、それが幾重にも連なって一面に張り巡らされていた。その八角形の中には、たくさんの小さな模様が描かれており、ラーメンの丼にある絵柄のように、同じ模様がいくつも並びその決められた形を作っている。
その一箇所に小さな穴のような、歪な黒いシミを最近になって偶然見つけた。
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