今は亡き相棒の忘れ形見が夜ごと迫ってくるのだが

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「生えないのはおかしいんだって。生えないなんてみっともないから、結婚なんて出来ないよって」 「そりゃまた随分な意見だな」  真面目に聞くのも馬鹿馬鹿しい話だ。しかし、当のケイトはこんなに真っ赤に目を腫らして泣くほど真剣に悩んで いる。相談を持ちかけられた手前、放っておくわけにもいくまい。 「とりあえず結婚に毛の有無は関係ないと思うぞ。生えてりゃいいってもんでもないしな。俺としてはむしろ濃いより薄い方が……」 「俺としては?」 「いや、なんでもない」  咳払いをして話を戻す。 「とりあえず、ゴワゴワのボウボウよりは手入れが楽でいいんじゃねぇのか」 「……そういうものなの?」 「まぁ、女の事情なんて知らねぇけどよ。しかし、なんでまたそんな話を俺にするんだ? そういう話なら姐さんの方が詳しいんじゃねぇのか」 「……アンジェリカさんになんて聞けないわ」  俯いて、唇を噛みしめる。 「だって見てよ!」  そう叫ぶとケイトは勢いよく白いドレスをたくしあげた。
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