今は亡き相棒の忘れ形見が夜ごと迫ってくるのだが

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 ヴィンセントは考えるのを止めた。 「なんでこの俺がこんなこと悩まなけりゃならねぇんだ。馬鹿馬鹿しい!!」  もとより、うじうじ頭で考えるのが苦手な男だ。  ブランデーグラスを掴み取り、残りの液体をガッと一気に流し込む。 「あれは夢、夢なんだ!! 現実じゃない、夢なんだ!!」 「もうなによ、さっきから。夢夢、夢夢、うるさいわねぇ」 「え」  もぞもぞとベットのシーツが膨らんで、にょっきり顔を出したのは 「……ケイト、お前どうしてここにいる?」 「どうしてって、覚えてないの? 酷い!」 「酷い!? ……って、俺はお前に何かしたのか?」 「なによ、ホントに覚えてないの?! ちょっと相談したい事があってヴィニーの部屋に来たら、そのままベットに連れ込まれて」 「う――わ――あ――――!! 言うな、みなまで言うな!! わ、わかったぞ、ケイトお前、どうせまた俺をからかってるんだろう」 「信じないの? 証拠ならほら」  白いシーツをめくれば、そこには確かに破瓜の後が。  血の気が引いた。真っ青だ。今度こそ、申し開きもつかない。  がっくりとうなだれるヴィンセントをニコニコ顔でケイトが見つめる。 「嫁入り前の娘にこんなことしたんだから、ちゃんと責任とってよね」 「せ、責任って……」 「まさか、ヤリ逃げするつもり!? 酷いわ! わたし、アンジェリカさんに訴えてやるから」 「か――――!! かかか勘弁してくれ!! そんなことされたら結婚する前に死んじまう!!」 「それじゃ結婚してくれるのね? ありがとう、わたし嬉しい!」  う、嘘だ。  嘘だと言ってくれ。  そうだ、これはきっと夢の続き。  悪い夢でも見てるんだ。  頼む、夢なら覚めてくれ!
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