今は亡き相棒の忘れ形見が夜ごと迫ってくるのだが

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 相棒が死んだとき、ケイトはまだ8歳だった。  ケイトを引き取る――そう決めたとき、周囲はもちろん大反対した。  それはそうだ。地位も学も金もない、おまけに生活能力まで皆無のヴィンセントに子供が育てられるわけがない。いくら相棒の頼みとはいえ、それは無茶というものだ。ヴィンセントたちの主を始め、誰もがそう口をそろえた。 「んなわけあるかっ!! ケイトの一人くらい、ちゃんと面倒みてやらぁ!!」  なんて、ムキになって喚いたところで無理があるのは、誰あろう自分自身がよくわかっていた。  だが、どこで噂を聞きつけたのか相棒の親戚とやらがケイトを引き取りにやって来た時も、ヴィンセントはそれを突っぱねた。ケイトを守る。それが相棒との約束だったし、ケイトもまた、それを望んでくれたから。 「わたし、なんだってするわ! お掃除だって、洗濯だって、お料理だって……ヴィニーがやれっていうなら、大嫌いなお勉強だってがんばるわ! ねぇ、だからお願い、わたしを引き渡すなんて言わないで!!」  ――お願いヴィニー、傍にいて! ずっと一緒にいるって言って!!  泣きじゃくりながら足に縋りつくケイトを突き放すことなんて、そんなことヴィンセントに出来るわけがなかった。
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