今は亡き相棒の忘れ形見が夜ごと迫ってくるのだが

4/22
前へ
/22ページ
次へ
 そうして二人で暮らすようになって、気がつけば10年の月日が流れていた。  ヴィンセントに宣言した通り、ケイトはなんでも頑張った。掃除も、炊事も、洗濯も……勉強だけはちょっと苦手だったが、それでもちゃんと頑張った。  ヴィンセントだって頑張った。ケイトと共に過ごしながら、時に怒られ、時に助けられ――主であるアンジェリカに言わせれば、どっちが保護者かわからないような有様だったが――それでも彼なりに精一杯頑張ってきたつもりだ。  笑顔に溢れた、あっという間の年月だった。  ヴィンセントにとってケイトは、かけがえのない『家族』だったのだ。  そんな自慢の娘であるケイトだったが、思春期を迎えて、どうにも困ったことが一つ。 「結婚しよう!! 絶対幸せにするから!!」  自信満々のケイトの口から突如放たれたプロポーズに、ヴィンセントが目を点にしたのは言うまでもない。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加