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「……ケイト、それは女の言うセリフじゃないだろう」
自分の両の手をしっかと握り、熱っぽい……というよりはむしろギラついた目で、射抜くように見つめてくる少女に向かってそう諭してみるが、彼女はそんなことは気にも留めない。それどころか
「ヴィニー、フェミニズムって言葉知ってる? 今の時代、受身の女は流行らないのよ」
……と、胸を張る。
フェミニズムとはまた、随分と小難しい言葉を出してきたものだ。といっても、この娘がその意味をちゃんと理解しているのかどうか、甚だ怪しくはあるのだが。
「ったく、いっぱしの運動家気どりかよ。第一、なんでそれを俺に言うんだ」
「なんでって、ヴィニーにだから言ったのよ。結婚するのはヴィニー以外に考えられないもの」
「……いくらなんでも視野が狭すぎやしないか? もっと他にいい奴いんだろ」
握りしめられた手をすっぽ抜き、ソファに寝そべって昼寝の態勢に入る。だが「いい奴って、誰?」そう食い下がるケイトに「誰!?」と思わず跳ね起きた。
「誰って、それは、あの、うーんと、あれだ、あの……誰だっていいだろそんなの!!」
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