今は亡き相棒の忘れ形見が夜ごと迫ってくるのだが

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 初めは不服そうなケイトだったが、その言葉を聞くと驚いたように目を丸くする。そんな彼女の頭を撫でて「そうだろ?」と瞳を覗き込んでやれば、「うん!」と大きく頷いてぴょんと勢いよく彼の胸に飛びついた。 「それよりお前さ、俺のことはいいから自分の幸せのことを考えろ、な?」 「わたしの幸せ? わたしは、ヴィニーがいればそれで幸せ!」  にへっと笑って、胸元におでこをぐりぐりと押し付ける。  ああもう、それはそれで嬉しいのだが――。 「あのな、今はそれでもいいかもしれんが、俺はお前より先に死んじまうんだぞ。その時お前はどうするつもりだ」 「大丈夫、ヴィニーが死んじゃっても寂しくないように子供たくさん作るから!」 「……お前、ちゃんと俺の話聞いてたのか?」 「あ、でも私が先に死んじゃう可能性だってあるんだよね。そしたらヴィニーが寂しくなっちゃう。うん、やっぱり子供はいっぱいいたほうが……」 「だから、人の話を聞けっての!!」
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