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バスを降り、見慣れた商店街を歩く。平日の日中、通りにはお年寄りと学校帰りの子どもたちの姿が目立った。アグネスに、新しく仕事を探してみるつもりだと言おう。年金で暮らすにはまだ若すぎる。
通りかかった店の脇で、ふと足を止める。以前からある小物屋だ。ガラス窓の中にディスプレイされた、小さな陶器の子犬が妙に気になった。
出発の日、きみは幼いロジーの手をひいて親子三人、バス停まで歩いたのではなかったか。道すがら、ロジーはこの子犬に気をひかれて、そして……
ぼくは店に入り、子犬を買った。
「贈り物でしょうか? リボンをおかけしますよ」
梱包材で包みながら笑みを浮かべる店主に、ぼくも笑顔で答える。
「お願いします。娘へのお土産なんだ」
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