あの日の忘れ物

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次の日私は、早く目が覚めた。 早く着替えを済ませ、寝ている母さんに「図書館行ってくる」と言い、外へ飛び出した。今日はもう帰っちゃう、だから。 少しでも少しでも、日向と一緒にいたい________。 図書館に上がると、日向は本を探していた。本をいっぺんに何冊か出し、その中に探しているものがないとしまい、そして本を探す。その繰り返し。 「日向、もう探してるんだね」 「うん、さっき始めたばっかだけど」 「じゃあ私は向こうを探すね」 そう言って私は、端っこの方へ向かった。 そこには、難しい本やら歴史本やら、私の知らない本がたくさんあった。 「どこにあるんだろ…」 そもそも私は本がどんなデザインなのかも知らない。 けど、『あの日の忘れ物』という名前だけは、心に刻まれている。 本棚の上から下を順番に見て、見つけたかと思って取り出しては、違う。 本当にここにあるのか、それすら分からなくなってしまいそう。 少し諦めた気持ちで、本を探していたその時、一つの本が目に入った。 その本は、本にしては大きく、平べったいものだった。 そっと取り出してみる。 「………これ、書いてある。『あの日の記憶』って…題名が…」 私はその本を抱きしめ、日向の元へ走った。 「日向これ…これ…だよね日向!」 私の方へ顔を向け、日向はその本を見る。 そしてバッと立ち上がり、本を受け取る。 「これだ…これだよ」 日向は、その本を強く抱きしめた。
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