あの日の忘れ物

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「ありがとう…ありがとう葵」 日向は、強くその本を抱きしめる。 「その本、どんなことが書いてあるの?」 私はそう言うと、日向は本を開く。 そこには、綺麗な田畑の景色が広がっていた。緑の中にも色鮮やかな花が顔を出している。 「綺麗だね」 「うん、綺麗と」 そして次のページをめくる。日向の手は少し震えていた。 次のページには、さっきの景色とは真逆の、真っ黒な景色が広がっていた。 何も見えない、これは…。 「これって、焼け…野原…だよね」 「うん、これが、僕の生きていた時代だよ」 「………え」 「だから、言わなかった」 私は驚きながら日向を見た。 するとそこには、少しずつ薄れていく日向がいた___。
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