幸福の星

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デネブは、まるで自分のことのように悦んだり哀しんだりをくり返すのだった。 そこで、ふと、はっとなる。神さまをわるく言ってはいけない。ナマコやヒトデにされて海底に沈みつづける天罰を受けた知り合いを思い出す。 そうして、地球経由で天の川に伸びる透明道路を、流れ星みたいなスピードでぎゅんぎゅん駆けていく。 ーーぼくは神さまから、夜が明けるまえにふたりがきちんとさよならをするように、見張り役を任されている。 ぼくもいろいろと話したいことはあったけど、いつか手紙でも送ればいいだろう。 だから、せめて・・・時間たっぷりまでふたりっきりにさせてあげるんだ。 デネブにしてはめずらしく、迷いのない意志が瞳に宿っていた。アクセルを踏む。わた雲を突きやぶると、もう線路はない。 宇宙に出た。暗く濡れたビロードの銀河系は母胎のような安心感がある。眩くて神秘的なイータカリーナ星雲は、いつ見てもわれを忘れるうつくしさ。バベルの塔みたいに放射状に膨張していて、それをなぞるように、光りかがやく水素ガスやチリを身に纏いながら駆けていく。 いったい何光年という高さなのだろう・・・うっとり見惚れていたら、デネブは目的のポイントに辿りついた。 「よぉし、ワープホールが見えたぞ!」
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