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寒くて目が覚めた。
始発の電車が動き始めた。
昨日の、子猫を欲しがっていた婆さんがやって来た。
婆さんは、ニコニコしながら俺に話しかけた。
「考えてみたんだけど、どうしてもパトリシアのことが忘れられなくて。あなたもいっしょに、いらっしゃい。パトリシアが、あなたから離れたくない気持ちはわかる。みんな、大好きな人といっしょにいたいのよ。さあ、いっしょに家に帰りましょう。あたたかいお風呂に入って、あたたかいスープを飲んで、あたたかいベッドで、ゆっくりお休み。」
「本当に、いいんですか?」
俺は、半信半疑だった。
「にゃぁ~ にゃぁ~ にゃぁ~ にゃぁ~」
子猫はまるで言葉がわかるみたいに、一生懸命に鳴いた。
俺は、冷えて固まった体を起こし、子猫を抱いて段ボールから出た。
段ボールをそのまま捨て去るのは気が引けるので、きちんと畳んで小脇に抱えた。
俺が、婆さんの後について歩き始めた時。
「待ちなさい!」
遠くから叫んだのは、昨日まで俺と子猫を飼っていた女だった。
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