捨て猫 vs 捨て男

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高級そうなコートを着た婆さんが興味深そうに俺たちの前で立ち止まった。 「これはテレビの撮影か何か?」 と俺に尋ねた。 「いえ。真面目に捨てられただけです。」 「えっ?!私、耳が遠いもので・・・ちょっと前に、21年も長生きしていた猫が死んでしまったのよ。この子によく似てたわ。パトリシア、おいで。私といっしょにお家へ帰りましょう。」 「にゃぁ~ にゃぁ~」 婆さんは子猫だけを抱き上げようとした。 ところが子猫の爪が俺の厚手のウールのスーツに引っ掛かって外れない。 婆さんが無理に引っ張るものだから子猫は暴れ、婆さんは子猫から手を離した。 子猫は、せっかくのチャンスだと思ったのか 「みぃ~みぃ~」 と婆さんに向かって媚びた声を出した。 「そうかい。そんなに、この男が好きなのかい。仕方がないね。この男はとても大きくて邪魔になるから拾って帰る訳にはいかないよ。」 婆さんは子猫にそう言って、名残惜しそうにしながら立ち去った。
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