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一話〜十話
一話 晴風と春
「ハル〜」
「しゅんにいさんどうしたの?」
あれから三年ほどが経った。俺は高校を卒業し、在宅ワークに専念している。これが意外と収入がよくて四歳と高卒の二人が余裕で暮らせるほどだ。もちろん俺のそういうセンスも良かったからだが。
「今欲しいものあるか?」
「そうだなぁ…うーん、じゃあ、もうこっちのきょーざいおわったから、あたらしいのがほしい」
「え、もう終わったのか????」
「?うん、おもしろかったよ??」
なんということだ、四歳児がすでに小学生レベルを終え、中学教材をやりたいと言っている。世界平和はきっと晴風を中心に訪れるな。
「よし、じゃあ、今日は出かけようか」
「うん!しゅんにいさんはほしいのないの?」
「ん?俺か〜無いな〜」
「ぼくは、しゅんにいさんのほしいものわかるよ〜」
「ん?なんだ?」
「こいびとでしょ?」
「ぶふぉぉっっ!!??」
おっと、飲んでいたカフェオレを吹き出してしまったようだ。いや、待て、そんな言葉どこで覚えた!?
「ハル…それ」
「よくわからないけどよるのどらま?でみたよ。なんかおとこの人はこいびとがほしいーっていってたよ?だからしゅんにいさんもほしいのかなっておもって」
「そうか…んー、でも今はまだいいかな。今はハルといる方が楽しいしな」
晴風の目的の教材と買い集めている今人気急上昇中の漫画を買い、帰宅をする。
「なぁ、ハル、面白いか?それ」
「うん、おもしろいよ。あたらしいことがたくさんかいてあるからおもしろい。」
「そうか、まぁ、それならよかったよ」
「しゅんにいさんはきらいなの?」
「嫌いってよりも好きじゃないんだよな。だったらゲームとかの方がいいな。必要以上に勉強してなかったけど、こうして仕事も充実してるし、楽しいし。ハルもやってみるか?」
「うん!やってみたい!おべんきょーもげーむみたいだってテレビでいってたからげーむもおべんきょーとおなじってことでしょ?」
「お、おう。」
なんだその数学的思考は。四歳児がする思考回路じゃねぇ。まぁ、こういう晴風は俺の自慢だが。
「しゅんにいさん、げーむせんたーってとこいってみたいな」
「えっ、今からか?んー、この時間帯だと素行悪い奴らが多いからなぁ」
「そこう…?」
「んーと、悪そうな人ってことだよ」
「そこうわるそう…」
「新しい言葉覚えられたじゃん」
「うん、おぼえた。」
「漢字も覚えような」
「がんばる。」
「まぁ、平仮名覚えたから大体の言葉も覚えられただろうし。漢字も覚えられるよ」
「やったー。それで、げーむせんたーは?」
ぐう、覚えてたか。しょうがない。
「じゃあ、約束しろよ?一人で行動しない。30分だけ。おーけー?」
「おーけー!あ、このきょーざいおわったらえいごもやりたい」
「わかった、わかった。一回勉強脳は停止させろ〜、疲れるぞー。俺も疲れる〜」
「えへへ」
近所のゲーセンに行くと特に不良などはおらず安心した。
というのも束の間、絡まれている高校生くらいの子を発見。
「しゅんにいさん。あれ」
「そう、あれ」
「そこうわるい人?」
「そうだよ。もう帰ろっか」
「あの人…こまってるよ…?」
つまりは、晴風は助けろと言いたいのだろう。ここは晴風に免じて助けてやろう。
「ねぇ、君たちその子困ってるからやめなよ」
「あ“ぁ?うるせーな、なんだよテメェ」
「そういう行為は周りの人の迷惑になるってこと理解した方がいいよ」
「うるせぇなくそじじい」
「残念ながら高校卒業して一年目だよ」
「じゃあ、そのガキは弟かよ」
こいつらは晴風のことを俺の息子だと思ったらしい
「まぁ、それでいいや」
「しゅんにいさん??」
「あぁ、ごめんね、ハル。そろそろ帰ろっか」
「うん」
帰ろうとすると危なそうな車が近づいてくる。
「ハル、こっち側に」
運転手はよくみると顔が赤くなって目が虚ろ。泥酔しているようだった。
「っ!」
車は暴走し、さっきの不良達に突っ込んでいく。
(不良だからといってまだあいつらは高校生だ!!)
恐怖で動けない不良達。不良?そんなの関係ない。助けなければならないのだ。
「くそっ!!」
ドンっ!!
「わっ!?」
「しゅんにいさん!!!」
(あ、ハル。ごめんな。俺が守るって言ったのに、一人にしちまうらしい。くそ。たてねぇ)
「あいつ…!おい!」
不良の一人が叫んでいる。あそこにいるのだ。助かるだろう。
「なぁ、これからは上手く生きろよ、お前ら。晴風を、あの子をよろしく頼む」
○×♪€|〒$=☆×=*÷=$」*1××=°〒|〆:☆♪
「はっ!??なんだ、これ。」
僕…俺?の脳内に知らない人の一生が駆け巡る。
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