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「知らない人にはついていくなって子供の頃に教わらなかったんですか? 俺ら、そんなホイホイ知らない人についていくように見えます?」
「祐真ぁ……やめてぇ……関わらないでぇ……」
毅然と意見する祐真に後ろでビクビクと震えている蒼汰。集団の目から見ても臆病な蒼汰が聖人の生まれ変わりには見えない。
「申し訳ない。君らに言っても仕方ないかも知れないが、現代に不思議な力を持った人が生まれ変わって復活しているという話があってね。私達はその人を探しているんだよ」
「へぇ。人探しのためなら小学生を泣かしていいんですか? 怖がらせていいんですか? そんなことを許すような不思議な力がある人には俺らは協力したくないですけど?」
「祐真ぁ……なんでそんな煽るんだよぉ……」
「大体ですね、いい大人が揃いも揃って不思議な力に頼ろうとするの格好悪くないですか? 不思議な力を持った人も呆れて出てこないんじゃないですか?」
震え声でやめてと訴える蒼汰を尻目に祐真は言い放つ。
「何を変えたいか知らないですけど、ダサくないですか?」
集団は押し黙る。その中、祐真は蒼汰の手を引く。
「ほら行くぞ。いつまでも震えてるなよ」
集団は祐真と蒼汰のために道を空けて、ただ二人の背中を見送った。祐真の言い分も尤もだったが、それ以上に蒼汰が聖人の生まれ変わりには見えなかった。
祐真と蒼汰は最初の角を曲がってから大きく息を吐いた。
「怖かった……。祐真、怖かったよ……。あと何回こんなことをすればいいのさ?」
「ん〜〜。中学卒業まであと七回かな?」
祐真は左頬の絆創膏を擦る。
「本当、痣だけ頼りに探すとかやめてほしいよね。蒼汰の痣はマジックで描いてるのにさ」
「あのね……毎回身代わりになってる僕の身にもなってよ。毎回本当に怖いんだよ? 不思議な力があるのは祐真の方なのに……」
「俺はいい友を持ったよ。大体さ、生まれ変わってくるからって面倒事押し付けようとか都合いいよねぇ。俺が復活したのは、個人の人生楽しみたいからなのにさぁ」
「それも僕以外の前では言わないでよ? 僕も変な人に思われるから……」
「はいはい。蒼汰のためならそのくらい問題ないよ」
名前も忘れ去られた聖人。彼は現代の片隅でひっそりと人生を謳歌しているかも知れない。
了
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