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「祐真、その絆創膏、まだ取れないの?」
「ん〜〜。もうちょっと。まだ外せないかな?」
二月の冬晴れの歩道橋を二人の少年がおしゃべりをしながら歩く。年末に積もった雪も少しずつ解けて、足元はベチャベチャとはねる。一人の少年は左頬に痣があり、もう一人の少年は左頬に大きな絆創膏を貼っていた。
「てか、いきなりテストとかやめてほしいよな。勉強より大切なことってあるはずだしさ」
「祐真、算数嫌いだもんなぁ」
「蒼汰だって嫌いだろ?」
「祐真よりマシ!」
そう言い合う二人の少年が歩道橋を渡り切った前にその集団はいた。
「痣だ! 左頬の痣だ!」
白人に黒人にアジア系の人に髪の色も多種多様な人の群れが二人を囲む。
「え……? 何?」
蒼汰が一歩後退るが集団はぐいと前に出る。
「君! その痣は生まれつきのものか?」
「え……? ううん最近できたものだけど……」
「もっとよく見せて!」
「ちょっと! 祐真助けて!」
蒼汰は祐真の後ろにひょいと隠れた。
「あなたたち、何ですか? 俺の友人が怖がっているんですけど?」
祐真は胸を張って訴えるが集団は引かない。
「君には分からない! その痣の子と話をさせてくれ! 世界に関わることなんだ!」
「警察呼びますよ?」
立ち向かう祐真の後ろで蒼汰はブルブルと震えている。
「いや。危害を加える気はないので……。君の後ろの少年に不思議な力はないかい? 予知夢を見たり、天候を当てたりとか……」
「ないよ! そんなのないよ!」
蒼汰は祐真の後ろで叫ぶ。
「天気当てることはあるんじゃないの? 全部外れる訳ないじゃんね?」
「祐真ぁ……余計なこと言わないでぇ」
泣きべそをかきだす蒼汰。集団はあからさまに落胆した声をあげた。
「君はもしかしたら凄い力があるのかも知れないのだよ? 世界を変えられるかも知れないのだよ? そんなべそをかかなくてもいいのではないかい?」
「あのぉ、痣を見ただけでなんでそんなことが分かるんですか? 痣のある人は沢山いると思いますよ? それだけで凄い力があると思うのは偏見じゃないですか?」
「祐真ぁ……喧嘩売らないでよぉ……」
顔を見合わせる集団の人々。
「君の言うとおりだ……。だが私達もね焦っているんだよ。しかし君は勇気があるね。ちょっと私達の話を聞かないか?」
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