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「あたし思いついたのよ、あの時の凪ちゃんの一言で。この辺りで男の子同士や女の子同士の結婚式を取り扱う式場ってまだないでしょ?うちがやっちゃえばいいんじゃない?って!」 ―綺保子さんも慎吾さんの結婚式に出たいよね― それをビジネスチャンスと捉える綺保子はやはり女傑としか言いようがない。 あの日、神の御前でキスを交わした二人はその式場の初の同性婚カップルとなり、その後自治体の定めるパートナーシップ協定を結び、晴れて結婚した。 さすがにわたしは出て行こう思ったのだが、せめて綺保子さんがいる間は……と引き止められ、それもそうだと思い直し、結局いまだに一緒に住んでいる。 綺保子は寿命を大幅に更新し、愛息の結婚の2年後に彼岸の人となった。 良くなったり悪くなったりを繰り返しながら、最終的には病気なのにぽっくり逝くという、 いかにも綺保子らしい最期だったと思う。 わたしは今は独立し、全国に何店舗かを構える書店オーナーとなっている。 その他、講演なども多く依頼されていて、まさに息をつく間もないくらいだ。
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