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「え!?そうなの!?本当に?そうなの!?」
綺保子がテーブルをさっと回ってわたしの脇について、
「あの子、我が子ながら顔も頭も性格もいいんだけどなぜか壊滅的にモテないのよ?理由はわかってるの、なんかダサいからなの、やることなすことぜんぶちょっとズレてるのよ、それでもあなたいいの?」
「えっと、あの…ダサくはないですよ?」
情報量が多すぎてまず何から訂正したらいいのかわからない。
凪がこっちをじっと見ている。
射抜くように。猫の目で。
『余計なことを言うな』
と言っているように思えた。
一方的によく喋って、綺保子は自宅マンションに帰って行った。
滞在時間は5分。
駅も商店街も遠いと言う理由で、夫が彼岸へ行ってからすぐに先祖代々の家を出て駅前のマンションに一人暮らししている綺保子さんはきっぱりすっぱり、竹を割ったような性格なのだと凪は笑う。
「慎吾さんに全然似てない。」
顔は似てるけど、と言う凪の目は柔らかく、猫の目じゃない。
そういう時の凪はいつも、瞼の裏の秋山を見ている。
本当に愛しい人を見つめる瞳というのは、とろけるんだな、と凪を見て知った。
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