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凪がこちらを振り向く。
私を見るときは、いつも警戒を解かない、挑発的な猫の目。
「あなたさ、うちに住みなよ。」
「えっと…それは大丈夫です」
「行くとこないんでしょ?行くとこある人は大荷物持って公園で熱出さないよ」
「……」
痛いとこついてくる。
何も言えないでいると、凪がふんわり笑った。
「何もしなくていいし、何もいらないよ。何かしたいなら何かしてもらうし。」
「…でも、あなたと秋山係長の邪魔になるでしょ?」
「邪魔はしないで?」
遮るように、凪がわたしの言葉をぴしゃりと切る。
「でも、あなたがいてくれた方が多分、いい。いいんだよ。」
最後は自分自身に語りかけるように、どこも見ないで凪がつぶやく。
その目はとろけていないし猫でもない。
真っ黒な穴が空いたみたいに、空虚だった。
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