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もはや帰宅への願掛けとしか思えなかった。 わたしはわたしで、開店作業の合間に大学を訪ねてみたりしたけれど、成果は上がらず、携帯も変えられて、もうお手上げだった。 凪の大学近くのお堀沿いのベンチにもたれて空を見上げる。 眼下には釣り堀と、ガタゴト走る黄色い電車。 どんよりとした灰色の真冬の空は、今のわたしと秋山の心模様をそのまま投影しているようだ。 「どこへいったんだよーナギスケー」 呼ぶ声は虚しく、高層ビルの空に吸い込まれる。 ほんとにどこへいったんだよ、ナギスケ。 凪の不在が日常になりかけ、秋山がグリーンスムージーを作らなくなった春のある日、綺保子さんが「結婚式場のヘアメイクと衣装、ついでに写真の練習台になってくれないか」と言う話を持ちかけてきた。 他ならぬ綺保子さんの頼みを断ると言う選択肢は二人ともなかったので、二つ返事で引き受けた。 そこで思いついたのだ。 どうにかして、凪を呼び出せないか、と。 思い出したのが凪の『トモダチ』だ。 名前はなんと言ったか…忘れたが、出会いは衝撃的だった。忘れられない。
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