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「そんなことになってたわけ?」 昼下がり、マンションの4階。赤ちゃんに授乳しつつ、走り回る3歳児を注意していた真理子が振り向く。 「なってた。そんなこと。」 わたしはアイスコーヒーをすすったあと、グラスを高いテーブルに上げる。 そうしないと子供がこぼす、と確か去年真理子に言われて、以来忠実に守っているのだが、3歳の子供は一切グラスに触らない。 どうやら一年でだいぶ成長したようだ。 「でもいいな。いいな、自分に興味がない綺麗な男たちと暮らせるなんて。全女性の夢だと思うわ。」 結婚し、子供を産み育てることが全女性の夢だと(洗脳)されていた時代もあったのに、世間の価値観の変化は激流である。 「でもそうだね。うん。すごい、楽。」 正直な気持ちだ。 二人が付き合ってるからこその、居候である。   見送りの時、真理子が小さな声で、 「ごめんね…うち来てって言えなくて。」 と謝るので、そんなのはいらないと手を振ってエレベーターに乗った。 いつからだろう。 悩みや問題を抱えた時、1番に友達に相談できなくなったのは。
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