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もっと若い頃ー高校生や大学生の頃は、嬉しいことも悲しいことも何だって友達に話して朝まで泣いたり笑ったりしていたのに。 夕暮れ前の街をトロトロ歩く。 家路を急ぐ子供、買い物途中の主婦、買い食いしている中学生。 仕事をしていた頃はこの時間に街中を眺めながら歩くなんてありえなかった。 たとえ早く帰れたとしても、社内の友達に誘われるがままに予定を入れていた。 飲み会、ネイルの予約、習い事、買い物。 断れない性格というのもあったし、そのせいでだいぶ散財したけれど、 家に帰りたくなかったしちょうどよかった。 でもそれが風船みたいに弾けた時、何も残らない。 残ったのは凪の瞳のように、空虚なわたしだけ。 ふと、商店街のスーパの店先で秋山を見つけた。 熱心に野菜を選んでいる。 後ろから声をかけると、飛びのいて驚いていた。 新鮮な反応が面白い。 「今日は直帰で、早く上がれたんで」 ととうもろこしを片手にはにかんでいる。 可愛い。 「あ、あとこれだな。凪が好きなやつ。」 と『わかめまんじゅう』と書かれた菓子を手に取った。
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