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わたしは家事も勉強も仕事もあんまりなんにもできないけど、何か一つなら頑張れる。気がしている。 成果が上がっているかどうかはさておき。 無心に床に雑巾を滑らせていれば、何もかも忘れられるような気がした。 彼に振られたこと。 派遣切りにあったこと。 両親が不仲であること。 今までわたしは何して生きてきたんだろう。 何か残ったんだろうか。 雑念を取り去るように、布に力を込めれば込めるほど、反比例するように床は気持ちいいほどピカピカになっていく。 ちょうど和風建築だし、禅寺みたいだ。 本当に死ぬよりは、死んだように生きるよりは、禅寺で修行する方が幾分かマシなのかもしれない。
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