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目が覚めたら天井が白かった。
充満する薬臭さと電子音。
腕を見るとゴム状の管が上まで伸びている。
病院だ。
「あ、目が覚めた。」
足元で声がしたので少し上体を起こすと、見知らぬ若い男の子がパイプ椅子に座って、読みかけの文庫本を片手に、こちらを覗き込んでいた。
医者という風情ではない。
チャコールグレーのノーカラーのコットンシャツを着た、細い青年。
「…貴方は誰?」
「僕?僕は凪。二階堂凪。」
凪の自己紹介が終わるのを待たずに、割れるような頭痛に襲われ、思わず顔が歪んだ。
「まだ動かない方がいい。あなためっちゃ熱あるよ、有木爽さん。」
凪、という名の通り、すんなりしたみめ形をしたその青年は何故か少し嬉しそうに椅子を揺らしながら言う。
言われた通りもう一度氷枕に頭を預けて、手持ちの書籍に視線を落とす凪の横顔を見た。
すうっと通った鼻梁。白くて細い、女性的な…というか今時の若者はみんなこうなんだろうか。
「なんで…?あなた…わたしのこと…?」
声が掠れているのがわかる。
喉が痛くて上手く発声できない。
凪は口の端を少し上げる笑い方で、目線だけで私を見た。
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