縷々屋

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 何だ、何だ、何だ。縷々と昨日の爺のことを考えると何だか変な気持ちになって来た。それはそうだろう。爺はどう見ても七十は超えている。ヨボヨボの皺々だ。  それでもまぁ、金は持ってそうだった。着物も素材がよさそうだったし、羽織物も皺や汚れなどはない。指にはゴツイ指輪が光っていたし、薄気味悪い笑みの中に下品な金歯も見えた。  それだけで断定するのはどうかとも思うが、爺は恐らく金持ちだ。しかも、縷々と親しげな仲に見えた。どちらかと言えば爺の一方的な好意に見えなくもなかったが。  あの接し方は「儂しか知らん縷々」を知っている接し方だと思う。「楽しませてもらうぞ」という意味深な言葉、落ちくぼんではいるが、鋭い鷹のような眼、老人の耳打ちに俯き、横顔を傾ぐ縷々、それらの光景が脳内で何度もリピートされる。  妄想力のステータスがマックスに成長する男子高校生なので、あんな光景を見せられたら嫌でも変な妄想をしてしまう。
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