縷々屋

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 昨日は金に目がくらんでいたということもあり、あまり深く考えていなかったが「これから縷々と顔を合わせるのだ」と考えると、昨日の不気味なやり取りが妄想たっぷりの脚色バージョンでフラッシュバックした。  まさか縷々の奴、本探しの探偵屋とか嘘の看板を掲げて売春とかしてないよな。そうなれば、異様に高いバイト代も、達成率〇%で飄々としている彼女の態度も合点がいく。「諦める」ってそういう意味なのか?  本当はあの爺に服を脱がされながら、耳元に息を吹きかけられて「あん」とか言っているのだろうか。あんなに純情そうな顔をしているのに、中身は飢えた獣だな。縷々屋の引き戸はガラス張りで、そのガラスにはギラついた目、鼻息の荒い男子高校生の顔がうっすらと映っていた。まさに獣。……って俺じゃん。何考えてるんだ俺は。縷々が売春しているだなんて、何も確証のない妄想だ。縷々も「本探しの仕事」と言っていた。俺は一歩後ずさりし、ムラムラする気持ちを落ち着かせる為に深呼吸。目の前の戸を引いた。 「ああ、君か。えーとムラムラ君」 「谷ムラです」
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