縷々屋

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 縷々がどんな格好をしていたかだって? 顔が近すぎて格好を確認するどころじゃありませんでした。しかし、こう、あれですな。女子が髪を上げた姿っていいですね。扇(せん)情(じょう)的(てき)と言いましょうか。多少肌の露出が増えるだけではあるのですが、髪を下げていた時とのギャップにドキリとさせられてしまいますね。一瞬ではありましたが、本当、素晴らしかったです。以上、ムラムラからの報告でした。  縷々が着替えた格好は「着物」だった。いや、しかしとても似合っている。藍色の袴に赤い華が咲き乱れる二尺袖。結われた髪に挿された華の髪飾り。着物や髪飾りに合わせたのか、本の表紙も赤色メインで「花」という字が含まれていた。縷々が動く度にその美しさは形を変え、新たな喜びを振りまく。嫌でも認めざるを得ない。どれだけ性格が歪んでいようとも、縷々は美人である。一体何の理由があって着物に着替えたのかは不明であるが。  店を出た後は、近くの川原を歩くことになったのだが、まさかのまさか、縷々は移動中も本を読んでいた。機嫌良さそうに鼻歌まで歌っている。 「きょうときょうときょうと~」 「何ですか、その歌は?」
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