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お風呂からあがり、天井電灯が薄暗い仏間で伯母さんから手書きのB5版の詩集を渡された。 ──ファンタオレンジの瓶と一緒に── タイトルは『世界の中心の樹』だった。オレがひとつひとつの言葉をゆっくり口誦すると、伯母さんは長い黒髪をタオルで拭きながらずっとやさしい表情で微笑んでいた。 ──ときおり漆黒の肖像額縁の兵隊姿の若い夫の写真を見上げながら── まだ小学生のオレによく理解できるはずもなかったが、それでも《世界の中心の樹》という言葉には強く惹きつけられていた。《世界の中心の樹》ってどんな樹だろう、と疑問を口にしたオレに、伯母さんは微笑みながら陽光のようなあたたかい眼差しをむけてくれた。
──むずかしいよね!
詩を読むのははじめてだったですか?
心当たりはあるんだけどね。
でもユウちゃんが大人になったら、
きっとわかるはずですから!
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