2.大福はレジカウンターにいる

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「あら、ねこさん。いいところに」  おばあさんはお釣りを財布にしまうと、花模様の手提げ袋から小さなブランケットを取り出した。 「これね、あなたにどうかと思って」  どこかで見たことのある模様だと思ったら、あの分冊百科のパーツをつなぎ合わせて作った小さなフード付きのブランケットだった。 「ここは寒いでしょ。いつも冷たい台の上に座っているからどうかしらと思ったの」  今度は敷物だ。おばあさんは色違いの編み物をレジカウンターに広げる。大福はすかざすその上に肉球を乗せた。すぐに爪を出してフミフミを始める。 「ぬくぬくだにゃ」 「これも着てちょうだい」  大福はおばあさんオリジナルの結び紐がついた白と抹茶色のブランケットを羽織った。白い丸顔、細目で和猫の大福にとてもよく似合っている。 「まあ素敵」 「ぽかぽかだにゃー」  毛糸で編まれたブランケットにくるまれて大福は喉を鳴らした。丸い背中がいつもよりも暖かそうだ。 「よかったわ。次はそちらのお嬢さんと一緒にいるペルシャ猫さんね」 「いえ、私たちはあの……」 「年寄りの楽しみと思ってね」  戸惑う斎さんに微笑みかけて立ち去ろうとしたので、僕はあわてて敷物を引っ張る。   「これ、お忘れ物です!」  「いやにゃー」と踏ん張る大福から敷物とブランケットを回収しようとすると、おばあさんは上品に腰を曲げてふり返った。 「あなたのために編んだのよ。いただいてちょうだい」 「あっ、あの」  カウンターから出ようとすると別のお客さんに「これ探してほしいんだけど」と捕まってしまった。斎さんもレジに入っている。仕方ない、店長が戻ってきたら相談しよう。あのブランケットを返して、どうしても大福が寒いって言うんだったら猫用の服を買おう。  ああ、また財布がさみしくなるなあと思いながらも、満足そうな大福の表情に心がゆるんだ。
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