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帰り際、ブランケットを見た店長の返事は「まあいいんじゃない?」だった。あまりの軽さに拍子抜けする。
「あの人、コリオスの超お得意さんなんだよ。俺のことなんかガキの頃から知ってて頭が上がらない」
店長の長いため息にその付き合いの長さがわかる気がした。
「でも……お金がかかってるのに、本当にいいんでしょうか」
「これはもう大福のものにゃ」
ブランケットをかぶったまま満足そうに「ぽかぽかにゃ~」と言った。店長は組んでいた腕をほどいて大福を抱き上げる。
「いいんじゃないかな、商品の宣伝にもなるってことでさ。上に許可願を出しておくよ」
「ありがとうございます」
「よく似合ってるじゃない、大福くん」
店長が抱き上げると大福はもがき始めた。
「ヒシエー離すんにゃー!」
暴れる大福を受け取ってケージに入れた。残業したことだし、大福の好物を買って帰ろう。
「さむ……」
外は雪が降っていた。コリオスショッピングセンターのシンボル、しっぽの長いねこの銅像が粉雪をかぶっている。
大福と出会ったのも雪深い日だった。どこかの飼い猫だったらどうしようと思ったけれど、半日経ってもアパートの階段下から動かなかったので家に入れた。
ウェットフードが食べられないくらい衰弱していて、動物病院にかけこんだ。その日以来、大福は僕の家で生活している。
冷えた自転車を押しながら、大福はどこから来たのだろうと思う。飼い主はどんな人だったんだろう、本当の名前はなんていうんだろう。
家族はきっと、悲しんでいるだろうな。
積もったばかりの雪を踏みしめながら家路をたどる。一人暮らしの家は暗く冷たくて、大福がいなくなったら寂しいだろうなと思った。
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