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3.大福がどこにもいない
翌日の朝、少し早めに倉庫に入ったけれどまだトラックからの荷下ろしが終わっていないようだった。
「早いですね、白河さん」
「清水くんこそ」
「毎年のことなんで。ちょっと様子見てきます」
清水くんは前日の返品用段ボールを乗せたカートラックを押し、エレベーターに乗り込んだ。ついていこうとした僕を制して「行き違いになったら困るんで」と扉を閉める。
年下だと思えないくらいきびきびとしている。僕が同じ年数勤務しても、同じように振る舞えると思えない。
「おはよう白河くん。荷物まだなのね」
「今、清水くんが荷受け場に下りていきました。あれ、今朝はあずきさんは?」
「今日はかなりバタバタするから休憩室にいてもらうの。何かあっても対応できないし」
「じゃあ僕もそうしようかな……」
「大福は今日もがんばるんにゃ」
大福は目を輝かせながら荷台に座っていた。昨日『ニャオちゅるちゅるん』を二本も食べてものすごくやる気になったらしい。ブランケットも羽織って準備万端だ。無理やり休憩室に押し込んで脱走されても困るしなあ……
「大福、頼りにしているからどうかよろしくお願いします」
「任せるんにゃ」
おだてておいた方が上手く行く気がする。先にレジ入金を済ませた岡内さんにも「頼もしいわねー」と頭をなでられてたいそうご満悦だった。
「お待たせしました。まだあと二台あります」
運搬用エレベーターいっぱいにカートラックを積んだ清水くんが戻ってきた。これで三台、計五台もあるのか。どのカートラックにも清水くんの背丈ほどの荷物が積まれている。
「ひえ……これを開店までにさばくんですか……」
「さあー気合いれていくわよー」
岡内さんが袖をまくって書籍を満載にしたカートラックを押すと、「ごめんごめん、遅くなった」と店長がかけこんできた。斎さんと僕も一台ずつカートラックを押す。
「出発進行にゃー」
大福がごきげんすぎて、かえって心配だ。何事もなければいいけどと思いながらあわただしく開店準備を始めた。
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