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「わが家にようこそ。ところで、きみはずいぶん壊れやすいね?」
『初めまして、ご主人さま。わたしは丈夫でピカピカな新品ですよ』
黒いのはぎこちない機械の声で答えます。
「特に問題はないってこと? なら、何で止まるの?」
『がんばって壊れています、ご主人さま』
「え?」
『わたしが壊れれば、ご主人さまが叩いてくれます』
コバさんは思わず、黒いのの四角い本体を見つめました。
「きみは……叩かれたいからわざと壊れてるってこと?」
『いっぱい叩いてください、ご主人さま』
コバさんは黒いのをサイレントモードにしました。この掃除機がこの家に来るのを嫌がらなかった理由が分かりました。半額だったのもきっと性格のせいです。
家電を直せることが不便だと思ったのは、電話した日に続いて2回目です。
「もう、家電なんていらないよ……」
そんなことを言っていたコバさんですが、何だかんだで、今も黒いのと仲よく暮らしているようですよ。
おしまい。
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