六章

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「おっはようございまーす」 朝からテンションが高い森永とは反対に、やけにテンションの低い飛鳥は俺と目を合わせようとはしない。 (何かしたか…?) そのような記憶は全くない。それとも業務上何かあっただろうか。 飛鳥のことが気になりつつも、朝からチームリーダーやマネジメントたちとミーティングがあった。 一時間半のミーティング後、会議室を出ると重たそうに会社用の台車に段ボールを乗せて押している飛鳥を発見する。エレベーターのボタンを押して、下の階へ行くようだ。 飛鳥は基本頼まれた仕事は全てやる。それが悪いことだと批判する気はない。 ただ、彼女は自分のキャパシティーを大幅に超えた業務ですら頼まれたらやってしまうところがある。それはこの部署に配属された初日にも感じたことだった。 飛鳥を小走りで追いかけるが、先に彼女に近づいたのは俺じゃなかった。 「飛鳥ちゃん、どこ行くの?」 「これ、下の階の部署に配るの手伝ってるんです」 「重くない?手伝うよ」 「ありがとうございます。台車つかってるので、大丈夫なんですけど…じゃあ、お言葉に甘えて」 朝倉さんが先に飛鳥に気が付いて声を掛けた。 飛鳥は今朝とは打って変わって表情を明るくして朝倉さんと会話している。 俺は大股で二人に近づいた。 「俺が手伝うよ」 「椎名君…?」 「椎名君、お疲れさま。大丈夫だよ、俺一人で十分だから」 「同じ部署なのは俺なんで」
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