六章

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「お疲れ様です。新商品のパンフレットが届きましたので配布お願いします」 飛鳥と一緒に下の階の部署に段ボール箱いっぱいに入ってあるパンフレットを配り終えると台車を戻すために更に下の物品庫へ向かう。 「なんか今日雰囲気違うよな」 「へっ?!そ、そうかな…」 「うん、違う。普段よりもオシャレしてる?」 「そういう…つもり、いや、そういうつもりなのかな。うん…そうかも」 たどたどしい口調でそう答えるが彼女は耳まで真っ赤だ。 嬉しいのか恥ずかしいのかいまいち感情が掴めない。 仕事になると目の色が変わるのに、こういう質問にはさっぱりだ。 「物品庫って俺行ったことないかも」 「そうなんだ。本社経験長いのに意外」 物品庫のドアを飛鳥が開けて俺と一緒に中に進む。 思ったよりも綺麗に整理されてあるようだが、コピー用紙や文房具、台車などが大量に置かれてある。棚に入りきらない備品が多いのかもしれない。 「飛鳥って好きな人いるの?」 「…」 台車を奥の定位置らしきところへ戻しながら訊いた。それは朝倉さんへの想いを確かめたかったからだ。が、飛鳥の反応は想像以上だった。 「何、その反応」 「あ…い、いない…」 「ふぅん」 「違う、いる」 「どっちだよ」 「椎名君には関係ないじゃん…」
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