六章

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「今日は…そうだなぁ…なんでもいいの?」 「カレーがいい」 「カレー?いいけど…」 「辛口がいい」 「へぇ、椎名君って辛いもの平気なんだ」 今日はカレーを作ることになった。 社会人になって自炊をすることは休日やよほど暇な時くらいしかしない。 カレーは特に出来上がるまでに時間がかかるからしばらく食べていない。 二人で買い物をしてから俺の家に帰った。 飛鳥は「お邪魔します…」と視線だけで部屋の中を確認していた。 「俺も作るの手伝うよ」 「いいの?それは助かる」 購入してきた食材をキッチンに適当に並べ、ビールは冷蔵庫に入れる。 「持ってきた荷物、俺の家に置いておいたら?」 「いいの?!」 「いいよ。また泊まりに来たらいいじゃん」 「…うん」 大きな鞄にはおそらく着替えなどが入っているのだろう。 事前に用意してくるところが飛鳥らしい。 「あの…他の女性の…下着とかはないよね?」 「下着?あるわけないじゃん」 「そっか」 「彼女はいないって何度言えばわかるんだよ」 「それはわかってるんだけど…」 釈然としない飛鳥の様子に苛立ちを覚えながらも俺と飛鳥はキッチンに立ち二人でカレーを作ることになった。
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