六章

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「椎名君ってさ、料理も出来て仕事も出来て頭もいいのに何で彼女いないの?」 「それ嫌味にしか聞こえねぇよ」 「率直な疑問で」 「別にいいだろ。いたっていなくたって」 腕を捲り、玉ねぎを炒めている彼女の横で他の食材を適切な大きさに切っている俺に向かって悪態をつく彼女を一瞥する。 「結婚って考えているの?」 「…なんで?」 「何となく…聞いてみたくて」 「……」 「……」 微妙な雰囲気に包まれた。結婚はメリットがない。したいと思ったことがない。 ただし、今は別だ。出来るならば…―。 「結婚願望はゼロだけど、一人だけしたいと思ってる子ならいる」 「え…っいるの?」 「いる」 「そう、なんだ。付き合ってもないのに?」 「悪い?」 「…いや、そんなことないけど」 飛鳥がコンロの火を消した。 この話題を逸らしたかったのか、彼女は強引にどうでもいい話題を振ってきた。
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