六章

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その後、二人で作ったカレーを食べ終え、風呂に入った。 11時過ぎから軽く飲むことになり、俺と飛鳥はソファに座ってビールを飲んでいた。 相変わらず飛鳥のスッピンは実年齢よりも幼く感じる。 持参してきた薄手の水色のドット柄パジャマは彼女に良く似合っている。 歯ブラシもメイク道具も着替えも持ってきたらしい。 「カレー美味かったな」 「そうだね。お腹いっぱいだよ」 「それはよかった。作ってくれてありがとう」 「椎名君だって作ったじゃん。二人で作ると早いね」 そう言って酔ってきたのか赤らむ頬を綻ばせる。 「知ってた?体の相性がいいと好きじゃなくても好きになったりするらしいよ。回数重ねると」 突然飲んでいたビールを吹き出しそうになる飛鳥にテーブル下の収納スペースからティッシュのボックスを手渡した。 「な、なに…っ急に、ゴホっ…」 「いや、この間雑誌でみた」 「そうなの?!」 「らしいよ」 というのは半分本当で半分嘘だ。美容室でたまたま読んだ雑誌に“セフレから本命になるためには”という記事を見たのだ。女性向けのその記事を読むに、意外にも体だけの関係だったが本気になる女性が多いことを知った。(アンケート調査が信じられるものかどうかは不明だが…) ということは、飛鳥も何度かセックスをしていくうちに好意が芽生える可能性だって否定できない。 良いやり方ではないが、飛鳥は何も知らないからそこを利用すれば…―。 邪な考えが脳裏を過る。 「でも…それって…男性も…なのかな?」 「…さぁ?見たのは女性向けの雑誌だったから」 そっか、と肩を落とす飛鳥に顔を近づけた。
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