六章

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二人の重みで沈むベッドの中心で膝たちをして彼女を見下ろした。 どこに焦点を合わせればいいのか分からない飛鳥はウロウロと辺りを見渡していた。 これからすることを理解しているくせに、そういう反応をされるとこっちだって余裕が無くなる。 「いいんだよな?」 「もちろん」 平然を装っているようだが、微かに手が震えている。 嫌がっている様子はないが、緊張しているのだろう。何度抱けば慣れてくれるのだろうか。 それとも“本命”の彼じゃないから内心では嫌なのか。 「飛鳥って俺とのセックス好きなの?」 「なっ…何急に…」 「嫌い?」 「…す、好きじゃなきゃ来てないよっ…」 天然小悪魔め、と心で悪態をつき彼女に覆いかぶさった。 「ふ…ぅ、んっ…」 舌を絡め、キスをするともじもじと下半身を動かす。めちゃくちゃに乱れて、そのうち俺しか見えなくなればいい。 その心の中にいる朝倉さんを追い出して、俺に溺れたらいい。 「ぁ、…っ…はぁ、あ」 時間をかけて丁寧に愛撫して、涙を浮かべる飛鳥を抱いた。 「練習じゃないから、俺は」 「…ぅ、や、だっ…ぁ、」 「こんなに感じてるくせに」 揺れるベッドの上で、彼女への想いをぶつけるように何度も突いた。 唇を半開きにして全身から力が抜けたかと思ったらビクッと大きく魚のように体が跳ねて何度目かの絶頂を迎える彼女の頬にキスをした。 「俺はこんなに好きなのに、」 その声はおそらく彼女には届いていない。
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