七章

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目覚めるとどうしてか体が動かない。 薄っすらと瞼を開けると、椎名君の抱き枕になっていることに気が付いた。 「…眠い」 多分椎名君は抱き枕が必須の人なのだろう。私が彼と一緒に寝る際はほぼ100パーセントで私は抱き枕になっている。 彼の腕の中はドキドキするのに、安心できる。 もぞもぞと布団の中で動いていると「おはよ」と少し不機嫌な声が届く。 おはよう、とすぐに返すと眠そうに目を細めながら二度寝しようとする。 椎名君は低血圧らしいから朝が苦手のようだ。 今日は土曜日だから、昼まで寝ていてもいいのだけど既に目が覚めてしまったからシャワーを浴びてくるためにベッドからそっと出る。 「昨日もしちゃったなぁ、」 泊まるたびに“する”のはいいことではないだろうが、こうでもしなければ彼と接点ができない。 モテる彼だから私のようなポジションの子は他にもいるかもしれない。 シャワーを浴び終えると持ってきていた私服に着替えた。かさばらないようにノースリーブタイプのネイビーのワンピースを着た。 「そろそろ帰ろうかな」 独り言を喋っているとリビングに彼が起きてきた。
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