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チンアナゴやキイロサンゴハゼなども発見した。非現実的な世界が広がり癒されていく。
と。
「わ、すみません」
「ごめんなさい」
人混みということもあり、見知らぬ人にぶつかってしまった。
椎名君はそれを見て、私に手をさし出す。
「はい」
「…え、」
「手」
「…」
瞬きを繰り返し、状況を理解しながら彼の手に自分のそれを重ねた。
手を握られたことによって、傍からみれば私と彼は完全にカップルではないだろうか。
しかも、重ねるだけだと思いきや、すぐに指を絡ませる彼にひぃ、と声が出る。
「普通です」
「…そう、ですね」
普通なのだろうか?と思ったがドキドキしすぎてそれ以上声が出なかった。
「もう少ししたらイルカのショーがあるらしいよ。行く?」
頷きながらも全神経は手に集中している。
椎名君は相変わらず余裕そうだ。イルカのショーは屋外のエリアにあるようだ。目的地へ向かう途中、私はこの空気に飲まれて普段ならば言わないことを口走っていた。
「いいな、彼氏…」
椎名君の足が止まったせいで、私の足も強制的に止まった。
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