七章

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夢を見ているような不思議な感覚があった。 彼の発言を何度も咀嚼する。しかし、どうして急にそのような発言をしたのか分からない。 椎名君を近くで見てきたが、彼女が欲しいというタイプではないはずだ。 「付き合ってはくれない?好きな人が他にいるから?」 「付き合いたいけど…」 「けどって何?」 と。その時『この後12時よりイルカのショーを屋外スペースにて行います』イルカのショーが行われるというアナウンスが館内に響く。 あと10分もないことを知りどうする?という目を彼に向けた。 「とりあえず行こうか」 椎名君にそう言われ、私は頷いた。 手を握られて、早歩きでイルカのショーが行われる場所へと向かった。 その間、彼から伝わる熱を感じながら先ほどの告白にも似た言葉を思い出す。 “付き合ってほしい” 私だって、椎名君と付き合いたい。 イルカのショーには無事間に合ったものの、最前列とは程遠い位置でイルカさんたちが人間の指示に従いショーをする姿を見た。 普段ならば集中するであろう場面なのに、イルカたちを見ている間も私の脳内は椎名君で溢れていた。 イルカのショーが終わり、残りは深海魚の歴史などの資料のあるブースを見て楽しむ。いや、後半は楽しんだ“フリ”だった。 楽しいことは楽しいが、純粋に水族館デートを楽しめなかったのは先ほどの真意の掴めない付き合ってほしいというワードのせいだ。
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