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人が流れるように電車に乗り込む中、私たちだけがまるで別の空間にいるように見つめ合っている。
雑踏を掻き分けるように電車から降りて改札に向かう人たちの視線を感じるが、そんなことは関係なかった。
聞き間違いかと思ったが、
「そんなに意外?俺がお前のこと好きっていうのは」
「…好き?」
呆れたように、でもどこか照れくさそうに言った彼に口を半開きにしたまま、一歩後ずさろうとした。
が、彼の手が私のそれを離さないから距離は一定だ。
「どういうこと?!」
「そのままだよ。好きだってこと」
「どうして?!」
「どうしてってそんなの理由はないだろ。飛鳥がいくら朝倉さんのこと好きでもさっき付き合うこと了承したんだから反故にするなよ」
「…朝倉さん?何言ってるの?どうして朝倉さんが…」
「だってお前朝倉さんのこと好きだろ?」
ええ?!と、つい大声を出してしまった私に忙しなく歩く人々の冷ややかな目が向けられすみません、と謝った。
「好きじゃないよ…そんなこと言ったことあった?」
「ないけど、見てたらそうじゃん。ていうか何、違うの?」
「違う!だって…私だって…椎名君が好きだし!」
「…は?」
お互いに目を丸くして固まる。
いったいこれはどういう状況なのだろうか。椎名君は森永さんや平田さんなどといい関係になっているような気がしていた。
焦っていた私は体の関係だけでもと思い、彼との接点を持とうと必死だった。
それが正解かどうかはわからないけど、それでも。
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