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「どういうこと?」
「そういう事だよ…。私だって!椎名君のことめちゃくちゃ好きなの!」
「…」
既に乗るはずだった電車が過ぎていき、再度自宅方向へ向かう電車が到着していた。
あの何でもパーフェクトの椎名君がひどく悩んでいるような顔をしていた。
椎名君からの”好き”の方が非現実的なのに、どうして椎名君はそんなにも信じられないという顔をしているのだろう。
顔に出やすいとよく言われていたからこそ、彼には本心が伝わっているのではとヒヤヒヤしていたのに。
「とりあえず、わかった。俺は飛鳥のことが好きで、飛鳥も同じってことでいいの?」
「うん、…それで、正式に彼女にしてくれるといいなって」
「はぁ、そんなの当たり前だろ。好き合ってるのに付き合わない選択なんかないだろ」
「まぁそうなんだけど」
「あらあら、仲いいのね」
「っ」
「こんなところで愛の告白だなんてねぇ。いいわねぇ」
「……」
「……」
突然、私たちの脇を通り過ぎた白髪交じりの和服を着た上品な女性がにっこりと微笑みながら言った。
それを聞いてようやくここで話す内容ではないことを思い出して、二人で電車に乗ることにした。
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