八章

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「じゃあ行ってくるから。安静にな」 「…ありがとう。いってらっしゃい」 今日は彼の仕事が忙しいのはわかっていたから(しかも私のせいだ…)仕事が終われば真っ直ぐ自分の家に帰ってほしいと伝えてある。風邪を移す可能性もある。 ベッド近くのサイドテーブルに飲み物を置いてある。 それに手を伸ばし、とにかく水分を取った。そのうちまた眠くなってきて目を閉じていた。 …―… … 昼食を取ったのは13時過ぎだった。それまでは泥のように眠っていた。 目が覚めたのは椎名君からの電話があったからだ。 とても優しい人だなぁ、と思い具合が悪いのにかかわらず嬉しくて枕に顔を埋めた。 ただ、電話越しからも彼の多忙さが伝わってきていた。 私の分の仕事もあるはずだから申し訳なくなる。熱を計ってみると37度台になっていた。 市販薬でだいぶ楽になったとはいえ、まだ体がだるい。 パジャマ姿のまま一日中ベッドの上にいた私が次に目を覚ましたのは19時を過ぎていた。 「…ずっと寝てた」 小さく息を吐いて、額に手を当てた。 少しは熱が下がっただろうか、近くに置いてあった体温計を手に取ったその時、電話が鳴った。 枕元になるスマートフォンを手にして耳に当てる。 椎名君だと思ったのだが、 「もしもし」 「あ、…朝倉さん?」 「そうだよ。今日休みだったから。大丈夫?」 勢いで出た電話の相手は椎名君ではなく朝倉さんだった。
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