二章

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「だから!そういう…冗談はやめてくれないかな…。慣れてないのそういうの」 長嘆し、パソコンに向き直る。椎名君は何を考えているのかわからない人物だ。 「冗談じゃないんだけど」 「え?」 「何でもない」 今度はどうしてか彼の方がムスッとして私から顔を背けた。何だか彼のせいで振り回されている気がする。 ―18時過ぎ 「今日は定時で帰れる人は帰る日ですよー」 「あ、そうだった~」 チームリーダーの声に私たちはハッとして時計を確認する。 皆キーボードを叩きながら眉間に皺を寄せて険しい表情をしていたが、一気に顔の緊張を解く。 篠内さんが数人とミーティングから戻ってきて 「今日は定時で帰りましょう~」 と、陽気な声で椅子に座る。 二週間に一度、ノー残業デーがある。ワークライフバランスを考えてのことだ。 「じゃあ、お疲れ様でした」 私と森永さんが先にフロアを出た。椎名君はあとから来ると言っていた。 出来れば彼が来る前に解散したい。 「急に誘っちゃってすみません」 「いいよ!何か仕事で悩み?」 「違いますよ!いつもお世話になってる飛鳥先輩と飲みたいなって」 「そうなんだ。ありがとう」 何度も言うが私よりもスタイルもよく可愛らしい顔立ちの彼女は性格もいいのだ。 こんないい子を普通の男性なら放っておかないのになぁ、と思いながら駅近くかつあまり同じ会社の人が利用しない居酒屋を選ぶ。
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