二章

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「椎名君…?あ、ていうか二駅前だよね、椎名君の自宅って」 「そうだよ」 背後の気配を感じ振り返るとどういうわけか、椎名君が私の後をついてくる。 一瞬自宅の最寄り駅が一緒だと思ったが、そうではないらしい。 二駅前だったから一度降りたのかと思いきや、一緒に改札を出た。 彼の行動には疑問符が浮かぶことが多い。仕事では一切そのようなことはないのに、どうしてだろう。 「送ってくよ」 「ええ?!いいよ、すぐに着くよ」 どういうわけか送ると言い出した。先ほど森永さんのことは送らないと言っていたのに…。 悶々としたまま本当に自宅まで送るつもりの彼の隣を歩く。 駅改札を出るまで人の視線を感じた。周りを見ると通り過ぎる人々が椎名君を見ている。 「すごいなぁ、」 「何が?」 「何でもない」 大学でも彼の周りには常に人が集まっていた。 「ねぇ、本当に私たちしたんだよね?」 彼は私の歩幅に合わせて歩いてくれているようだ。モテるんだろうなぁ、とそういう小さなことでも感じる。
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