10675人が本棚に入れています
本棚に追加
「椎名君…?あ、ていうか二駅前だよね、椎名君の自宅って」
「そうだよ」
背後の気配を感じ振り返るとどういうわけか、椎名君が私の後をついてくる。
一瞬自宅の最寄り駅が一緒だと思ったが、そうではないらしい。
二駅前だったから一度降りたのかと思いきや、一緒に改札を出た。
彼の行動には疑問符が浮かぶことが多い。仕事では一切そのようなことはないのに、どうしてだろう。
「送ってくよ」
「ええ?!いいよ、すぐに着くよ」
どういうわけか送ると言い出した。先ほど森永さんのことは送らないと言っていたのに…。
悶々としたまま本当に自宅まで送るつもりの彼の隣を歩く。
駅改札を出るまで人の視線を感じた。周りを見ると通り過ぎる人々が椎名君を見ている。
「すごいなぁ、」
「何が?」
「何でもない」
大学でも彼の周りには常に人が集まっていた。
「ねぇ、本当に私たちしたんだよね?」
彼は私の歩幅に合わせて歩いてくれているようだ。モテるんだろうなぁ、とそういう小さなことでも感じる。
最初のコメントを投稿しよう!